フッ化物による急性毒性の発現段階と症状

フッ化物を多量に摂取すると、ヒトの体には色々な症状が出てきます。摂取して早い時期に出る症状を急性症状、長期間かけて体に様々な悪影響がみられるのを慢性症状と言います。ここでは、前者の急性症状を見てみます。

1、フッ化物の中毒とは

学会などの報告では、フッ化物で治療や入院などが必要となる量は、体重1kgあたりで2mgとされています。たとえば3歳児(平均体重15kg)では30mgとなり、これはフッ化物歯面塗布1回分を2mlとして、4人分を一度に摂取した場合です。
同様に、5歳児(平均体重19kg)では38mgとなり、例えると週5回法のフッ化物洗口液の40人分を1回で飲んだ場合に相当します。(日本歯科医学会 、日本口腔衛生学会)

一方、フッ素の急性中毒量は体重1kgあたり5~10 mg、消化器症状は体重1kgあたり3~5 mgで発生するとされ、そしてフッ化ナトリウムは体重1kgあたり71~74mgNaFが限度となります。(財団法人日本中毒情報センター)

2、もし大量に摂取した場合どうなるのか

万が一の話ではありますが、お子さんが間違って大量のフッ化物を一気に飲み込んでしまったら、どのような症状が見られるのでしょうか?万一、フッ化物を過剰に摂取してしまった場合、大きく2つの症状が現れます。

(1)2〜5 mg/kg摂取した場合
主に、飲み込んだフッ化物が胃の中で胃酸と反応してフッ化水素というものを形成します。これが胃の粘膜を直接刺激し、悪心、胃部不快感、嘔吐、腹痛、下痢などの症状が現れます。ただしこれらの症状は軽度なことが多いです。

(2)5〜15 mg/kg摂取した場合
この濃度になってきますと、フッ化物が胃腸で吸収されて、血液の中に入って全身をめぐります。フッ化物は血液中のカルシウムと結合しやすいという性質がありますので、急激な低カルシウム血症の状態になります。低カルシウム血症でh、けいれん、不整脈、意識障害(昏睡)といった症あ状が現れます。

(3)15mg/kg以上摂取した場合
この濃度になってきますと、呼吸停止、意識喪失そして死に至ると言われています。

3、フッ素は安心して使える薬剤です。

日本歯科医学会 、日本口腔衛生学会は、より厳しめの安全基準を用いていることがおわかりいただけたと思います。そして、それを歯科医師と歯科衛生士が管理していますので、万が一にも過量に摂取するという可能性は、とても低いといえます。