痛みに配慮した歯科治療について〜電動注射器や笑気麻酔を用いた方法〜
2025/10/31
歯科医院への通院を躊躇してしまう理由として、治療時の痛みへの不安を挙げる方は少なくありません。過去に痛い思いをした経験がある方や、注射が苦手な方にとって、歯科治療のハードルは高いものです。しかし、痛みを我慢して治療を先延ばしにすると、虫歯や歯周病が進行してしまい、結果的にはより大きな治療が必要になることもあります。そのため、歯科医院では患者さんが安心して治療を受けられるよう、痛みに配慮したさまざまな工夫を取り入れています。
痛みに配慮した歯科治療が求められる理由について
歯科治療における痛みへの不安は、多くの方が抱える共通の悩みです。特に子どもの頃に痛い治療を受けた経験がある方は、大人になってからも歯科医院に対して苦手意識を持ち続けることがあります。
痛みへの恐怖心から歯科医院への通院を避けてしまうと、虫歯が進行して神経まで達してしまったり、歯周病が悪化して歯を失うリスクが高まったりします。口腔内の健康状態が悪化すると、食事や会話にも支障をきたすことがあり、生活の質が低下してしまう可能性もあります。
このような背景から、歯科医療の現場では、患者さんができるだけ痛みを感じることなく治療を受けられるよう、技術や機器の進歩とともにさまざまな取り組みが行われています。
## 痛みを感じにくくするための麻酔方法とは
歯科治療で痛みを軽減するために、局所麻酔が用いられます。この麻酔注射そのものに対する痛みや不安を和らげるため、現在では複数の方法が取られています。
まず、注射針を刺す前に、歯ぐきの表面に麻酔薬を塗る表面麻酔を行うことがあります。表面麻酔を施すことで、針が刺さる瞬間のチクッとした痛みを感じにくくなります。表面麻酔は塗布してから数分待つことで効果が現れます。
次に、注射針の細さも痛みに影響します。現在では非常に細い針が使用されることが多く、針が細ければ細いほど刺入時の痛みは軽減されると言われています。
電動注射器による痛みへの配慮について
麻酔液を注入する際の圧力による痛みを軽減するために、電動注射器を使用することもあります。電動注射器は、麻酔液をゆっくりと一定の速度で注入することができるため、手動の注射器に比べて痛みや不快感を抑えられると言われています。
手動の注射器では、注入する速度や圧力を完全にコントロールすることが難しく、急激に麻酔液が入ることで組織に圧力がかかり、痛みを感じることがあります。電動注射器を使用することで、注入速度を精密にコントロールし、急激な圧力変化を避けることができるのです。
また、麻酔液の温度も痛みに影響を与えます。冷たい麻酔液を注入すると、温度差によって刺激を感じることがあります。そのため、体温に近い温度に温めた麻酔液を使用することで、注入時の刺激を少なくする配慮をしている歯科医院もあります。
笑気麻酔を用いたリラックスした治療について
痛みへの配慮として、笑気麻酔という方法もあります。笑気麻酔は、笑気ガスと酸素を混合したものを鼻から吸入することで、リラックスした状態をつくり出す方法です。
笑気麻酔を使用すると、意識はありながらも、ぼんやりとしたリラックス状態になります。痛みに対する感覚が鈍くなり、治療に対する不安や恐怖心が和らぐと言われています。治療中も会話ができ、歯科医師の指示に応じることができます。
笑気麻酔は、歯科治療に強い恐怖心がある方や、嘔吐反射が強い方、お子さんの治療などに用いられることがあります。吸入を止めれば数分で元の状態に戻りますので、治療後の回復も早いという特徴があります。また、笑気麻酔は体内で分解されずにそのまま排出されるため、身体への負担が少ないとも言われています。
ただし、妊娠中の方や呼吸器系の疾患がある方、鼻呼吸が困難な方など、笑気麻酔が適さない場合もありますので、使用できるかどうかは歯科医師に相談する必要があります。
痛みに配慮した治療を受けるために大切なこと
痛みに配慮した治療を受けるためには、まず歯科医師に自分の不安や痛みへの恐怖を伝えることが大切です。過去の治療経験や、どのようなことに不安を感じているのかを共有することで、歯科医師はそれに応じた治療方法を提案することができます。
痛みへの感じ方は人それぞれ異なります。痛みに敏感な方もいれば、比較的平気な方もいます。自分の感覚を正直に伝えることで、歯科医師は麻酔の量や治療のペースを調整することができます。
また、定期的な検診を受けることで、虫歯や歯周病を早期に発見し、大きな治療が必要になる前に対処することができます。早期発見・早期治療は、結果的に痛みの少ない治療につながります。小さな虫歯であれば、麻酔を使わずに治療できることもあります。
痛みに対する配慮は、歯科医療技術の進歩とともに日々向上しています。不安を抱えたまま治療を避けるのではなく、まずは歯科医院に相談してみることをおすすめします。痛みへの不安を取り除き、健康な口腔環境を保つことは、全身の健康維持にもつながります。





