フッ化物液磨きの安全性

歯科用品の売り場で歯磨剤や洗口剤(マウスウォッシュ)を見てみると、ほとんどの商品にフッ化物が配合されています。フッ素はよくわからないが、安全なのか心配だという声もあります。
フッ素の化合物の安全性について見ていきます。

1、フッ素は人体にとって必須な微量元素です

微量元素のうち、生命と健康維持に不可欠な元素を必須微量元素といいます。体のとくに歯や骨をつくる石灰化のプロセスにフッ化物は欠かせない物質であり、欧米では長年にわたり必須栄養素として、摂取すべき量が策定されています。私たちが日常口にしている食品には、かなりのフッ化物を含んでいます。なかでも食塩、お茶、魚介類のフッ化物濃度が比較的高いことがわかっています。

2、むし歯予防のためフッ化物の応用

エナメル質のほとんどはハイドロキシアパタイト(HA)からなります。HAは酸に弱いのですが、フッ素が加わるとフルオロアパタイトとなり、酸に強い歯になります。そのため、むし歯の予防のためには、フッ素を使うことは有用だと言われています。フッ化物を使う主な方法にはフッ素を歯に塗ってもらう(フッ化物歯面塗布)、フッ素の水溶液でぶくぶくうがい(フッ化物洗口)、フッ素が入っている歯磨剤(フッ化物配合歯磨剤)を使う、さらには水道水にフッ素を添加するなども行われた時期があります。

3、フッ化物は安全か

フッ化物の安全性は次の通り確立されています。
1歳〜4歳までの8人の子どもを対象にフッ化物液磨きを行いました。その結果、口腔内に残留したフッ化物量は平均 63.8 (21.3〜102.0)μgでした。これは体重1kg 当たりにすると平均 4.9 (2.5〜6.9) μgです。
一方で、ヒトのフッ化物経口投与中毒について、中毒が発現する量は体重1kg 当たり約5〜10mg/kg で、つまりこれは5,000〜10,000μg/ kgに相当します。下痢や腹痛といった消化器症状が現れる量は約3〜5mg/kg (3,000 ~5,000μg/kg)となっていますので、お子さんがフッ化物を使うことにおいて、その安全性については全く問題ありません。
一方、井戸水や水道水などに元々フッ素を多く含んでいる自然の飲料水で育った人の歯には、白い斑点や縞模様が現れる「斑状歯」(歯のフッ素症)というのがあります。中毒が発生するよりはるかに少ない濃度(1.0ppm以下)とはいえ、歯の形成期に長期間ある程度の濃度で摂取し続けるのは影響が出るということも言えます。

※参照
公益財団法人日本中毒情報センター
乳幼児から高齢者まですべての患者さんへのフッ化物活用ガイド/荒川 浩久 (著)
https://www.euronica.co.jp/Topics/fusso.html