新たな感染症を踏まえた歯科診療とは

この新たな感染症とは、新型コロナウイルス(COVID-19)による感染症をさします。
歯科医院での院内感染(クラスター)の報告は、他の医療機関と比べてほとんどありません。今まで歯科医院で取られた対策などをとりまとめることで、今後似たような新規感染症が発生した場合へもすみやかに対応ができるようになります。

新たな感染症を踏まえた歯科診療ガイドラインについて

公益社団法人日本歯科医師会は、令和2年8月に「新たな感染症を踏まえた歯科診療カガイドライン」を策定し、公開しました。その主な内容は、まず新型コロナウイルスの基本知識について、そして歯科医療機関における感染予防策について解説しています。

具体的には、標準予防策について、診療に関する留意点、診療環境に関する留意点、スタッフに関する留意点、マスクについての留意点、そして歯科医療機関向け「みんなで安心マーク」の認証についてです。

 さらには「日常生活におけるコロナウイルス感染の防止」の1つとして、コロナウイルス感染には口腔健康管理が有効であることのエビデンスを整理する必要があり、日常生活の中での口腔健康管理を、かかりつけ歯科医機能の1つとして位置づけるという目的もあります。

その他、今後同様の感染拡大があった場合に、診療室での対面での診療ではなく、在宅でどのような治療、指導管理を行うべきか、また新型ウイルス感染者への歯科医療に対応可能な医療機関と歯科診療所との連携、地域行政と地域歯科医師会との連携体制整備にも触れています。

歯科診療の院内設備などについて

歯科医院に限らず、医療機関での感染対策の基本は、標準予防策(スタンダード・プリコーション)と感染経路別の予防策です。

1)標準予防策
標準予防策とは、「すべての患者の使用した器材は、感染性があるものとして取り扱う」という考え方です。B型肝炎ウイルスなど、患者さん本人も知らずに実は感染症を持っている、という可能性があるからです。

2)換気などで空気感染のリスクを減らす
受付はマスクを装着し、アクリル板パーテーションを置いてやりとりすることで飛沫感染のリスクを減らします。また診療室の空気は定期的に換気します。SARSの時も換気は院内感染の発生率が低いと言われています。

3)接触感染の機会を減らす
接触感染の予防として、待合室・診療室の雑誌、本、遊具など消毒が困難なものは撤去します。

歯科診療の消毒滅菌体制について

1)手指消毒の徹底
患者来院時の手洗い、手指消毒が基本であり、大切です。診療室の入口に手指消毒剤の設置をするなどを行います。

2)歯科用ユニットと周囲の消毒
・新型コロナウイルスは、60%以上のアルコールで消毒できます。また0.05%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(ハイター)も使えます。診療で使ったデンタルチェアをはじめ、患者さんが触ったドアノブ、パソコン、レントゲン撮影機器など、高頻度に接触する部位に対して拭き上げをします。治療時の接触部位にラッピングを行うことも有効とされています。

2)使用した器材の消毒滅菌について
滅菌作業を行うスタッフは手袋とゴーグルを着用し、院内で伝播させないようにします。専用の薬液やオートクレーブなどを用いて、各器材に決められた消毒・滅菌処理を行なっています。